
あらゆる垣根を飛び越える、
「好き」という原動力
- よしざわゆういち
吉澤祐一
- 取締役Vision&ビジネス推進キャプテン
国内金融機関に30年勤務。2022年5月星野リゾート入社。約半年間の出向期間を経て、2022年12月より星野リゾート・アセットマネジメント取締役財務経理本部長に就任。2024年12月より現職。
前職時代に感じた、星野リゾートグループで働く人たちの熱い想いに惹かれて入社
前職銀行では不動産証券化一筋、20年以上のキャリアだそうですね。
前職銀行では、1か店目は法人営業を担当していましたが、2か店目で金融商品開発部に異動となり、デリバティブ業務、証券化業務に従事しました。その後1999年4月に組成された不動産証券化チームの立ち上げメンバーとして配属されました。2000年にJ-REITが誕生してからはREIT業務にも携わりました。その後、審査(10年)とフロントを経験しましたが、いずれも不動産証券化業務でしたので、銀行人生の後半の23年間は不動産証券化業務を担当しておりました。
そもそも、なぜ不動産証券に興味を持ったのかと言えば、きっかけは学生の頃まで遡ります。私の大学時代の1980年代後半から1990年代初頭はバブル真っ只中で、地価が異常に高騰していた時でした。私は都市計画を専攻していたのですが、地価高騰はテーマの一つでした。大学内の教授が本を執筆されており、「アメリカで実践されている“不動産の証券化”の枠組みを用いれば、地価は適正に価格形成される」という非常にユニークな考えに感化され、卒論も「日本における不動産の証券化」にしたほどです。当時はまだ日本に不動産証券化の考えがありませんでしたが、不動産を金融商品化することは金融が軸なんだと気が付き、金融の世界にも興味が湧き、銀行を志望しました。
入行後も「証券に関わりたい」「不動産証券化がやりたい」と言い続けていたので、不動産証券化チームが立ち上がる際に異動させていただき、以降、銀行を卒業まで、不動産証券化業務に携わっていました。
前職を卒業されて、星野リゾート・アセットマネジメントにはどういった経緯で入社されたのですか?
10年前に星野リゾート・リート投資法人が上場する以前から担当し、銀行を卒業まで携わらせていただきましたので、その縁で入社しました。
10年の間、星野リゾート・アセットマネジメントの方々だけでなく、星野リゾートの方々とも接する機会が多く、その際に仕事に対する熱い想いを感じました。また、人としても素晴らしく、懐が深くて、いろいろなものを吸収しようとする前向きな方々だなという印象がすごくあったんですね。当時から、こういう方々と一緒に仕事ができることに喜びを感じていましたし、より強い結びつきで仕事がしたいとも思っていました。そして銀行を卒業後、セカンドキャリアを考えているときにお声がけいただき、入社しました。
他にはどんなところに惹かれたのでしょうか?
REIT市場において、新しいカタチを創造したことだと考えています。従来のREITは、オフィスやレジデンシャル、商業施設など、不動産を第三者に貸すことが基本です。一方、星野リゾートの場合、対象資産が自分たちが使用する事業用不動産なのです。私はこれをCRE型REITと勝手に呼んでいましたが、その第1号が星野リゾート・リートでした。このチャレンジングな社風は、当時の私に非常に強く映りましたし、REIT業界に風穴を開け、以降、多くのCRE型REITが誕生しました。
成長力加速に向けて、会社経営を先導していく
前職時代との違いはありますか?
2022年12月より、財務経理本部を所管しております。財務部は銀行業務にも関わるため、勘所はありますが、経理部は初めての仕事になります。また、REIT業務を銀行で20年以上もやってきたので、ローン業務には精通しており、ある程度自信があったのですが、REIT業界の調達手法は投資法人債や公募増資など多岐に渡り、私が携わっていたのは極一部でしかないことを痛感しました。ただ、REIT業界の方々と今まで仲良くさせていただいたおかげで、友達が多いことが私の財産でして、周囲のみなさんに助けを借りながら、新たな知見を広げています。
経理部は、決算や税務に関わることから当然正確性が求められますが、同時に会社全体の数字が集まります。数字から実態を読み取ることが必要になるので、社内各部署やスポンサーの関連部署、有識者ともコミュニケーションを密に行い、バックグランドの事象を理解したうえで、会社経営を先導しています。
新たに踏み入れた環境で、挑戦していることがあれば教えてください。
最近では、グリーンファイナンスやサステナブルファイナンスなどが重要な資金調達手段となっており、新たなファイナンス手法の構築や管理運営の高度化に取り組んでいます。加えて、足下では円金利の上昇に対するリスクがクローズアップしているため、金融マーケットや他REITの動向にも注視し、安定した資金調達実現に向けて、新たな金利ヘッジ手法も取り入れています。
足下のマーケット環境は驚くほどのスピードで変化していますが、変化をむしろ取り込み、他社との差別化を図ることで、星野リゾート・リートの社会における存在意義に繋がると思っています。10年前、新しい取り組みを行うことでREIT業界に風穴を開けた星野リゾート・リートですが、新たなチャレンジの積み上げを継続し、成長力を加速化させていきたいですね。
仕事とプライベートの垣根を超える力の源泉は、「好き」にある
ご自身も大の旅行好きだそうですね。
はい、そうなんです。元々旅行好きで、この2年を振り返っても、2ヶ月に一度のペースで家族旅行を中心に旅行をしています。10年前、星野リゾートを担当してからは、プライベートでも星野リゾートの施設を利用するようになりました。印象的だったのは、『界 鬼怒川』を利用した際のことです。『界 鬼怒川』は駐車場から宿までスロープカーで登って行きます。宿に到着する前から非日常を味わえる演出に感動しましたが、スロープカーの乗車時に名前を伝え、エントランスで出迎えを受けると、チェックインを済ませたわけでもないのに名前で呼ばれるのです。私が業務を通じて星野リゾートの方々に感じていた、熱い思いが充溢したホスピタリティに心を打たれました。以降、多くの施設を利用しましたが、デューデリジェンスで伺った運営の話を、利用者の立場で実感しました。仕事を通じた星野リゾートと、宿泊客として魅せられた星野リゾートがどんどん重なり合って行き、星野リゾートのイチファンになっていました。そして、度々耳にしていた「日本観光産業は世界に誇れる産業だ」という言葉の意味を、身をもって実感しました。

趣味を楽しむ傍らで、産業としての成長性や優位性を感じたのですね。
前職時代、海外のIR事業者のプレゼンテーションを聞いた際、「日本の観光ポテンシャルは非常に高い」と言われたことがあります。「東京、大阪どちらを拠点にしても日帰りで、複数の世界遺産にアクセス出来るし、地域内に伝統産業も多くあり、自然観光もできる。日本人が自覚している以上に、日本の観光産業はもっと盛り上がるはずだ」と。この言葉が強烈に脳裏に残っていました。その出来事があったすぐ後に、星野リゾート・リートの上場に携わったこともあって、私の中でも観光業の機運は感じていましたが、やはり自分で体験すると実感値が違うものですね。
プライベートの旅行でも、仕事的な視点でつい見てしまうのでしょうか?
私にとって旅行が遊びか仕事なのか、その境目を自分でもわかっていません(笑)。そう考える原点は、若い頃に当時の上司に言われた「実査は、収入は素人の目で、費用はプロの目で見ろ」という言葉が印象に残っているからかもしれません。例えば、レジデンシャルであれば住む人の立場で、駅は近いのか、商店街の利便性はどうなのかを、つぶさに見てみる。ホテルであれば、その周辺を実際に散策したり、サービスを受けてみたりと、宿泊客と同じような過ごし方を体験してみる。利用者として、つまり素人の目線で感じろと教わったのです。自分自身が対象となる不動産にワクワクするかで価値が決まる、と。ですから、仕事において“素人”目線を、つまりプライベートな感覚をインストールしなければならなかったんですね。オンでありながらも意図的に素人目線を持つ。それを20年以上続けている訳ですから、オンでもオフでも自然と視点を横断する癖が体に染み付いてしまったのでしょう。仕事とプライベートに垣根がないことが、私には合っているのかもしれません。

世界屈指の観光立国を目指し、競争力を下支えするベストスキームを見出す役割
財務経理を管掌する立場から、今後の展望をお聞かせください。
先程も申し上げたように、観光産業はこれからの日本において基幹産業になっていくものだと考えています。日本が独自性を持って世界にアピールできる産業ですし、少子高齢化が進む日本において、日本が生き残っていく道でもあると思います。そのために、グループは運営力を高め、日本の観光産業をより魅力的にしていかなくてはなりません。さらに大きな視点で見れば、観光産業における世界競争力を高めていくためには、より多くの投資家様にご協力いただくことが必要です。私はREIT業務だけではなく、ノンリコースローンやエクイティの経験もありますから、REIT財務に加えて、少し幅広にスポンサーである星野リゾートと連携を取り、今とは違ったスキームを検討することで、観光業の盛り上がりと星野リゾートの成長に貢献していきたいと思っています。また、既に開示されているように、星野リゾートは海外進出も目論んでおりますから、ベストなスキームを見出していきたいですね。星野リゾートがさらに大きくなることを目指すだけでなく、星野リゾートを通じて、日本が世界屈指の観光立国になることを目指して努めていく所存です。
ワカモノインタビュー
吉澤同様、銀行員を経て星野リゾート・アセットマネジメントに入社した本間がインタビュアーを担当。アクティブに動き続ける吉澤の原動力や価値観を、公私両面から探りました。

本間:仕事もプライベートも、とてもアクティブですよね。スポーツもお好きなそうですが、今はどんなことをされているんですか?
吉澤:チーム競技はサッカーとソフトボール、そしてゴルフですね。あとは2年前からボランティアで小学生のサイクリングツアーの付き添いをやっています。1日に自転車で70キロぐらい走るロングランなんですけど、トレーニングで自転車に乗る時間がなかなか取れないので、だいぶきついんですよ(笑)でも小学生の小さな女の子が必死に漕いでいる姿を見ると、自分も頑張らなきゃって(笑)。
体を動かすことが好きなのは、父親の影響が大きいですね。私の父親がボクシングの全日本チャンピオンだったんです。プロではないけど、オリンピック候補選手に選ばれるような人で。だから小さい頃から父親に連れられて、ボクシングジムに通っていました。私は高校の頃からボクシングの試合に出るようになりましたが、陸上部にも入っていたんです。でも、陸上はボクシングのために体を鍛えることが目的で(笑)。ボクシングは高校で辞めてしまいましたが、その後もソフトボール、サッカーとずっと何かしらのスポーツは続けてきました。
本間:吉澤さんの座右の銘を教えてください
吉澤:座右の銘とは少し違うかもしれませんが…、父親に小さい頃から言われて僕の中に染み付いている「トップを目指す」という言葉はとても大事にしています。先ほどお話ししたように父親はボクシングの全日本のチャンピオンで、トップを目指す過程を知っていたんですよね。その過程は、他にいろいろなことに応用できるんだと話していました。小さい頃は言葉の意味を理解できなかったけど、社会人になり、働くようになって、やっと言葉の意味が理解できました。
トップを目指そうとすれば、時間をどう捻出するのか、情報をどうやって仕入れるのか、自分の苦手なことをどう克服するのかなど、さまざまな壁にぶつかります。この考え方やそこでの努力は、結果的に多様な場面で応用できるんですよね。仕事も例外ではありません。だから、自分に与えられたものに対しては、とにかくトップを目指す。仮にトップになれなかったとしても、目指す過程での努力は、きっと次に役立つはずです。
- 本間さん
- 投資運用本部
アセットマネジメント1部
ワカモノプロフィール
2020年入社。総合不動産会社、アセットマネジメント会社、銀行で私募ファンドやREIT向けのアセットファイナンスを経験したのち、ホテルREIT業界へ。